最終章 その5

事務所時代にご指導を戴いた殺陣の師匠のN村さんや、過去に共演させて戴いた元宝塚歌劇団の女優M・Hさんは、最近舞台でご一緒させて戴いた時に、口を揃えて「成長したな」と言って下さいました。技術の事ではないと思います。そして僕の変化に気付いて下さるという事は、未熟な時期の僕もしっかり見て、気にかけて下さっていたと言う事です。当時はそれにすら気付いていませんでしたが。

自分の考え方、相手への接し方が変わっただけで、驚くほど世界が変わりました。行き着く答えは結局、「自分の世界を決めるのは、すべて自分自身。それ以外にない。」例の集団で学んだ1つ目です。

子供の時は、自分では大して世界を変える事なんて出来ません。成績が良い子も悪い子も、真面目な子もすぐ逃げ出す子も、優しい子も自分勝手な子も、学校と言う社会からは同じ報酬を与えられます。教師からの扱い、同じ勉強内容、同じ休み時間、同じ給食。例え問題を乗り越えられなくても、最終的には大人が許し、助けてくれました。本人の頑張りや実力に関係なく、同じ報酬を得られる事が子供の世界での平等でした。

でも大人の世界では本人の努力や実力に伴い、報酬の量や質が変わります。報酬とはお金の事だけではなく、地位や名誉、自由な時間、信頼、仲間、幸せなどです。自分次第で世界が変わる、変わってしまう、変える事ができる。それが大人の世界の平等なのです。

父からの暴力があった、学校ではイジメがあった、事務所ではパワハラがあった。それは事実だし、しかも僕のせいじゃなく、トバッチリ、巻き込まれ、不運。不登校になった、鬱になった、首を吊った、それもすべて事実。でも、だからどうした。大事なのは、そのうえでそんな自分が気付くかどうかだけ。

他人のせいで、環境のせいで、運のせいで、今悪い状況になったのは事実だとしても。そのうえで「だから頑張らない」のか、「だけど頑張る」のか。どんな苦しい状況下にあったとしても、「頑張れないから頑張らない」のか、「頑張れないけど頑張る」のか。「やらない」との答えを先に決め、それを正当化するために「やれない理由」を探している間は変えられません。

0コメント

  • 1000 / 1000