第3章 その2

サッカー部員ではない、イジメ連中の仲間も部に出入りする事もありました。レクリエーション気分で混ざって来るのは百歩譲って良いとしても、僕がボールを奪えば「なんじゃワレコラ!」と大声でオラ付くので、まともに練習なんてできません。ヘラヘラ笑いながら自分に都合の良い判定を主張し、僕が「いや今のは違うだろ」と言えば、突然豹変し「なんやコラ、やんのか!」ってな具合です。僕の私物の防寒手袋を「GKやるからそれ貸せや」と取り上げられた事もあります。使い終わった手袋はそのあたりに放り捨てられていました。

ある練習試合の数日前、試合で使うビブスを各自が家に持って帰る事になりました。好きな番号を選びたかったですが、良い番号は僕の手から奪われていきます。しかしそんな中、連中が手を付けなかったビブスが1つありました。11番のそのビブスは結ぶ紐が1本切れていたため、連中が取らなかったのです。11番は大スター三浦カズ選手の番号でもあり、サッカーでは良い番号です。ちょうど良い箇所に破れた穴もあり、そこにもう片方の紐を通せば着れると判断、紐が1本なくても構わないと、僕はそのビブスを持ち帰りました。

ところがそのビブスを洗濯した母が翌日、気を遣って新しく紐を縫い付けてしまいます。「勝手な事すなよ!」僕は母に縫い付けた紐を外させました。母は、なぜ僕がこんな剣幕で怒るのか分からなかったと思います。僕には、紐が直ればこのビブスは必ず連中に取り上げられてしまう事が分かっており、母が愛情で縫ってくれたそれを、連中が汚すのを絶対に見たくなかったのです。迎えた練習試合、4―3で大逆転勝ちしたその試合で僕は1人で4得点を決めました。

さらに逆奇跡のような信じがたい事が現実に起こります。定時制は人数が少なく、学年2クラスで男子は30人くらいでした。そのうち前年に仲の良かった友達が4人、普通に会話を交わす人が8人、無害で愛想の良い年配の方が3人、ほとんど話した事のない人が8人、サッカー部で僕をイジメてる奴らとその仲間が6人、少々大雑把ですがだいたいこんな感じでした。

2年生になってクラス変えがされると、なんと仲良し組と、年配組の方々と、普通に話す人が全員揃って隣のクラスで、全然話した事のない人と、サッカー部の連中一味の全員が同じクラスになったのです。とても信じられない話ですがこれは本当の出来事です。

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